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有機コーヒーの課題と解決策の提案

ドキュメント内 R[q[̎ЉȊwÍ@|ʂėL@R[q[͎sgł̂H| (ページ 72-75)

第 3 章  コーヒーの有機栽培

3.8   有機コーヒーの課題と解決策の提案

これまで有機コーヒーについて多くの点が明らかとなった。ここで流通拡大への課題も 明らかにしておこうと思う。

  1つ目は消費者の有機コーヒーに対する認識である。先ほど有機栽培であることと味とは 関連がないことがわかった。もともとおいしいコーヒーは有機栽培で味がさらに良くなる ということはなく、別の要素に左右されるようである。すると、有機栽培を選択するとい

う理由は味から外れる。そして飲用者の健康面でも、コーヒーに関しては有機栽培である ことは無縁である。なぜならば、農薬が散布される部位は土や葉や果実であり、かつ焙煎 の際に高温になるので毒性は消えてしまい、豆には影響がないからである33。つまり、消費 者が有機コーヒーを選択することは、労働者の健康や生産地域の環境に配慮するためだけ であるといえる。しかし、有機コーヒーを広める上でこの 2 点だけを売り物にするという のは、特に嗜好品であるコーヒーについては難しいのではないだろうか。正しい情報を与 えるほど、健康や味などのイメージで選択していた消費者は離れていってしまう恐れがあ る。

2つ目が価格と味とのバランスである。コーヒーが売れるための大きな条件は味と価格で あろう。消費者アンケートでも、この2つを判断基準にするとの答えが圧倒的に多かった。

それでは、アンケートからもうかがえるように、コーヒーを入手する場所として最も一般 的なスーパーやコンビニで売られている有機栽培は果たして消費者の選択要因、おいしさ と低価格に訴えるものなのであろうか。筆者は普段からコーヒーを愛飲している友人とと もに実際に飲んでみることにした。

方法は次のとおりである。筆者の近くで最も人気のあるスーパーで売られている大手メ ーカーの有機コーヒーと、そのスーパーで同じ大手メーカーが発売している最も安く、か つ原産地が近いものとを飲み比べることにした。店頭価格は有機コーヒーが240g入りで約 500円(100gあたり 208円)、廉価版コーヒーが 400g入りで約300円(100gあたり 75 円)である。コーヒーの価格の差は約3倍である。売られていた有機コーヒーはその1 種 類しかなく、有機コーヒーが売れ筋でないのが分かる。有機コーヒーはコロンビア産、廉 価版はそれに極力近いようにとコロンビアベースのブレンドを選んだ。一般的なペーパー ドリップで適正な方法で抽出し飲んでみた。

結果はどちらも味に大差なく、おいしくないというものだった。粉でパック詰めしてあ り、お湯を注いでも粉が全くふくらまず34、飲んでみても古いコーヒー特有の味がした。嫌 な重い味で、賞味期限まで十分な日数があるにもかかわらず酸化した酸味が感じられた。

コーヒーカップに半分ほどでもう十分という印象である。普段安すぎるスーパーのコーヒ ーは飲んでいないということもあるかもしれない。しかし、有機コーヒーのほうは240g500 円であれば、他の十分においしいコーヒーが飲めるだけの値段であるだけに、余計に残念 であった。これではスーパーの有機コーヒーは消費者の選択肢に入らないであろう。

スーパーに並んでいる有機コーヒーは味を重視する層からは味の点で敬遠され、低価格 を望む層からも敬遠されるのである。有機に特別な思いを抱く人はアンケートにも見るよ

33 ところが、健康面から有機コーヒーを選ぶという人が、特に女性に多い。ある企業は有機を求める客す べてが女性であった。先述のように消費者アンケートでも健康を有機コーヒーの利点として挙げる声があ った。

34 適切に焙煎した新しい豆は、お湯を注いで抽出する際に、含まれていた炭酸ガスのせいで体積が倍ほど に膨らむ。

うに稀であり、業者が力を入れるほどのものではない。有機栽培を重視する人であっても、

決して今のままでは賢明な消費者の選択とはいえないと思われるのだ。

消費者が有機食品に購買意欲を持ち、売り上げが伸びるポイントは、低価格、入手のし やすさ、高品質であると、有機栽培の分野に長く携わっている横田氏は指摘している。こ れまでは手間がかかっているのだから高くて当然という意識が需給双方にあったが、国内 の競合と海外有機製品の流入で競争が激化し、低価格になっていくだろうとも述べられて いる35

有機コーヒーは決して高価格ではない。スーパーなどで売られている一般的なコーヒー が安すぎるだけである。品質を考えれば、有機栽培であってもそうでなくとも、大きな金 額の差は認められない。ところが品質という点で課題が残るのである。スーパーに並んで いる有機栽培を冠している商品は一般に高品質とはいえないからである。有機コーヒーは 味に幅があるので、おいしい有機コーヒーは確かにたくさんある。ところが、消費者への アンケートの回答からは、スーパーやコンビニで購入するという人が圧倒的であった。よ って、有機コーヒーの評価はスーパーに並んでいるもので大勢が決してしまうことになる。

スーパーの有機栽培がうまいということになれば、有機栽培がよいという考えがない層に も自然に消費は広がっていくことだろう。

3 つ目が売り込み方である。スーパーなどで売られている大手の有機コーヒーは、「有機 栽培」と大きく銘打ってあるだけで、味の特徴であるとか、有機栽培にしてもどこでどの ようにして栽培されたのかとかが書かれていない。有機栽培であるという情報しか提供さ れないのでは、価格も並んでいる他の商品よりも高いので、もともと有機栽培に大いに関 心がある消費者しか買おうとしないであろう。業者はコーヒー自身を訴えているのではな く、イメージだけを売っているのである。これでは意識のある一部の消費者にしか訴えら れない。コーヒーの味にうるさい人は手出しもしない。そして、たとえ手を出したところ で、先ほど述べたように見事に味の点で裏切られるのである。

先述のように、宇都宮市のフェアトレード有機コーヒーを扱う店では、パッケージがか わいいものだけが特に売れた。有機であるというパッケージはどうしても硬めに映る。流 通を広めたいのであったら、有機栽培であるというアピールだけ訴えるよりも、うまそう なイメージ、変わったパッケージなどを前面に出して売り出すほうが現実的であるかもし れない。

 有機コーヒーの多くはその売り込み方に特徴がない。概して漫然と売られている。むし ろ有機コーヒーであることを前面に出さずに売っているコーヒーが自家焙煎店に多く、よ く売れているという。スターバックスで扱っているコーヒーも、その多くが認証は得てい

35 横田、前掲書、p.164参照。

ないが、実は有機栽培で作られている36。このことを知っている消費者はどれだけいるのだ ろうか。うまいというだけでコーヒーは売れる。有機を表示することは、認証の手間をか けて「消費者が得る満足」を売っているということになる。現状において確実に有機コー ヒーを手に入れるためには、スーパーなどで認証マークが大きくついているそれほどおい しくない上に高いコーヒーに甘んじるしかないか、有機表示をしていない自家焙煎業者な どに直接確認するか、インターネットなどを使って自分で業者を捜し当てて、通信販売で 購入するしかないようである。

また、日本人はとりわけ「ブランドイメージ」にこだわる。例えばモカマタリはもはや うまいコーヒーではなくなってきているのにもかかわらず売れる37。ブルーマウンテンは確 かにうまいが、同じくらいうまいコーヒーは他にもたくさんあるにもかかわらず、ブルー マウンテンだけを買おうとする38。消費者は何気なく大手のブランドや豆のブランドで買っ ているのである。この点にも有機コーヒーは立ち向かわねばならない。

宇都宮市内の自家焙煎店へのインタビューによれば、よく売れるのは圧倒的に名前が知 られた有名な産地の豆であるという。そして、おいしい豆が限定品として入荷した場合で あっても、「○○マウンテン」などと銘打ったものが、そうでないものに比べ、圧倒的に売 り上げが違うという。味がそれに相関しているわけではなく、むしろ味はそうした名前が ついてないほうが良い場合もある。いかにネーミングが重要かを示す事例であろう。

筆者が行ったアンケート調査によれば、ブランドで選ぶという人が人中55人中5人いた。

豆の種類・産地で選ぶ人も 7 人いた。消費者は選択をする時、価格はもちろんであるが、

潜在的であれ産地をイメージしているといえるのではないか。味を知る前段階では一層そ うであるといえる。現時点で有機はブランド化しているのかもしれないが、多数が受容す るブランドで果たしてあるのだろうか。メキシコやペルーなどマイナーな生産国が主な有 機コーヒーの産地である現状で、有機コーヒーはよりブランドイメージを高める必要があ るのではないか。その確立に寄与するのがやはり味だと思うのである。

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